近年、製造業のお客様から在庫管理に関するご相談が増えています。サプライチェーン全体でムダを削減し、効率的な生産計画を立てるためには、原材料の発注管理から中間品、完成品に至るまでの各工程の在庫管理が必要不可欠です。不十分な在庫管理は、原料不足や余剰在庫といった問題を引き起こしやすく、企業全体の生産性や利益に悪影響を及ぼします。
現場では、Excelを用いた在庫管理が一般的ですが、リアルタイムな在庫数の把握が難しく、入力ミスや更新の遅れによる在庫の不一致、管理の属人化が深刻な課題となっています。また、会計上の資産管理の観点からも、工程ごとの在庫管理の精度が求められています。
このような課題を解決する手段として注目されているのが、WMS(倉庫管理システム)の導入です。本記事では、Excelによる在庫管理の課題や在庫管理を効率化するポイント、WMS導入のメリットについて、製造業に特化した視点から詳しく解説します。
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Excelは誰でも手軽に利用でき、追加のコストもほとんどかからないため、小規模業務の管理には便利なツールです。多くの製造業の現場でも、Excelを日常業務で活用していることでしょう。生産管理システムなどの基幹システム(ERP)による在庫管理では、原料・完成品などをすべて「総在庫数」として一括りに管理するため、たとえば、生産に使えない部品の端材なども在庫としてカウントされることがあります。このような場合、正確な生産計画の策定が難しくなるため、ERPの在庫管理を補完する形でExcelを利用するケースが一般的です。
しかし、近年では「脱Excel」の動きが加速しています。その背景には、Excelによる在庫管理がもたらす多くの課題があります。たとえば、「管理ファイルの所在が不明」、「管理対象の増加によるメンテナンス負担の増大」などが挙げられます。これらの課題が業務効率の低下を招き、Excel管理の限界を感じている企業が増えています。Excelの具体的な課題として、次のような事項が挙げられます。
Excelファイルが特定の担当者に依存して管理されているケースがあります。このため、情報共有が組織全体で行われず、ファイルが特定のPCに保存されているため、他の担当者がデータを確認できない状況が発生します。
Excelで集計や処理を行うために複雑な数式やセルの参照を設定する必要があり、後からの修正が難しくなります。また、参照先が不明確になり、どのデータをもとにしているか把握できなくなる問題も頻発します。
大量のデータを扱う際、Excelが負荷で強制終了し、データが消えてしまうことがあります。また、複数の担当者で同一のファイルを操作すると、誤って上書きしてしまうリスクも高まります。
世代別のバックアップを取っていない場合、データに問題が発生しても過去の状態に戻すことができません。また誤ってファイルを削除してしまうリスクも常につきまといます。
製造業では、倉庫管理が生産管理や販売管理の補助的な業務とみなされることが多く、システム投資が優先されにくい状況があります。このため、Excelで在庫を管理するケースが一般的であり、管理が複雑化することで多くの企業が課題を抱えています。在庫管理の効率化を目指すためには、Excelを補完または代替するツール導入が不可欠です。
製造業でExcelによる在庫管理が煩雑化し、正確な情報共有が難しくなるのは、業界特有の事情が関係しています。ここでは、在庫管理を効率化するための3つのポイントを解説します。
製造業では、素材の仕入れから製品の生産の過程で、在庫は部品(原材料)から中間品、中間品から完成品へと変化します。それぞれの工程で在庫状況をリアルタイムに把握することは、欠品や過剰在庫を防ぐために不可欠です。欠品が発生すると作業や納期が遅れ、過剰在庫が生じれば保管スペースの圧迫や廃棄コストが発生します。調達担当者はこれらを考慮し、適切なタイミングで必要な部品を手配できる体制を整えることが重要です。
売れ残りの在庫や過剰な予備在庫は、保管スペースを圧迫し、業務効率の低下やコストの増大の要因となります。そのため、滞留品の管理は、限られた保管スペースを有効に活用し、業務全体の効率を向上させるために欠かせないプロセスです。しかし、Excelでこの作業を行う場合、データの煩雑さが確認作業や分析の大きな負担になりがちです。滞留品を自動で検出し、管理対象を一目で把握できる仕組みを取り入れることで、リアルタイムな在庫把握が可能となり、在庫管理の効率化を図ることができます。
倉庫では、同じ商品品目でも良品・不良品の区別や、缶ビールのようなバラ売り・6本入パック・24本入りケースといった異なる管理単位を設定する必要があります。これらの管理単位を使い分けつつ、在庫の整合性を保つことは、Excelでは非常に手間がかかります。こうした複雑な管理を効率的に行うためには、適切なシステムの導入が重要です。
Excelで行う在庫管理には多くの課題がありますが、これを解消し、業務効率を向上させるための有効な解決策として、WMSの導入が有効です。WMSは在庫管理にとどまらず、入出庫や棚卸などといった倉庫管理全体をサポートする機能を備えています。WMSの導入によって、次のような効果が期待されます。
WMSは在庫をリアルタイムで可視化し、全社的に在庫情報を一元管理できるようにします。倉庫内を移動して在庫を確認する手間が省け、異なる部門や拠点間で最新の在庫数や入出庫履歴、欠品状況を正確に把握できます。これにより、部門や拠点を超えた調整や情報共有がスムーズに行われ、業務全体の効率が大幅に向上します。
製造工程ごとの在庫確認が可能となり、払い出した素材がどのロットに使われているか追跡できます。これにより、トレーサビリティが飛躍的に向上し、適切な調達や精度の高い生産計画の策定が可能となります。
消費期限(賞味期限)・製造ロット・入庫日・産地・銘柄・色・サイズといった多様な製品属性や、良品・不良品・返品などのステータスを細かく管理できます。また、バラ・パック・ケースといった異なる数量形態にも対応しており、誤出荷の防止と正確な在庫管理の実現をサポートします。
複数の拠点にまたがる在庫管理は、Excelで行うと煩雑になりやすく、誤差が生じる原因となります。WMSを使用すれば、複数の倉庫や拠点を一元的に管理でき、拠点ごとの管理ミスを減らすことができます。また、操作手順が標準化されるため、属人化の防止やメンテナンスの効率化にもつながります。
WMSの導入により、在庫数や入出庫の履歴が可視化され、商品の在庫推移を詳細に把握できます。このデータを活用することで、販売需要や生産状況の変化に応じた最適な在庫量を調整でき、過剰在庫や欠品のリスクを軽減します。
WMSの導入は、単なる在庫管理の効率化にとどまらず、生産計画や販売活動においても大きな最適化をもたらします。WMSを活用することで、倉庫内の入出庫管理やロケーション管理、作業の進捗管理をリアルタイムで行い、従来のExcel管理や手作業に依存した業務から脱却できます。これにより、作業の精度とスピードが向上し、業務が一貫して効率化されます。このような改善により、生産・計画・販売の各段階でより正確なデータと迅速な対応が可能となり、企業全体の業務の最適化が進みます。
WMSを導入することで、在庫とロケーションを紐づけて管理することができ、どの製品がどこにあるか即座に把握できます。これにより、在庫確認作業が大幅に効率化され、販売計画や生産計画に必要な情報を迅速に得ることができます。加えて、作業者の経験に頼らず正確なピッキングが可能となるほか、空きロケーションの検索や、ロケーション別入出庫の追跡が効率化します。
ハンディターミナルの連携により、作業現場で在庫情報をリアルタイムに更新できます。入荷検品やピッキング、在庫照会を迅速に行うことができ、販売や生産計画に必要な情報が即座に反映され、業務全体の効率が向上します。
WMSが入出荷データや在庫情報を他システムのレイアウトに変換してデータを提供することで、受注情報をもとにした製品出荷や、生産指示情報をもとにした部品の払い出し、配送計画の最適化などがスムーズに行えます。このように、販売、製造、物流が一貫して効率化され、SCM(サプライチェーン)全体の効率化を図ることも可能になります。
WMSは外部委託先の在庫管理も強化します。外部の工場へ作業を依頼した場合にも、在庫の管理が可能です。どの部品をいつ払い出し、外部委託先で作業を完了して中間品や完成品がいつ入庫したかを追跡でき、これにより生産計画業務が最適化されます。
このようにWMSの導入は、単に在庫管理の効率化だけでなく、生産計画や販売計画の最適化にも貢献します。製造業において、製品の品質の維持、工程別在庫の最適化、リードタイムの短縮、消費期限順の出荷管理などは品質を守るために重要です。そのため製造業の企業にとって、在庫管理のリアルタイム化や管理の細分化のニーズは今後ますます高まるでしょう。これらのニーズが高まる中で、WMSの導入が有効な対策となります。
「ORBIS-Ⅵ製造工場」は、製造業に特化したWMSです。製造業に求められる工程別の在庫管理やピッキングミスや誤出荷の防止、棚卸作業時間の短縮などを実現します。さらに、生産管理システムとの連携も容易に行え、受注情報をもとにした製品出荷、生産指示情報に基づく部品の払い出し、次工程への部品出荷処理をスムーズに実行できます。さらに、基幹システムや取引先企業とのデータ連携が簡単に行える設計となっており、業務プロセス全体の効率化と取引先の満足度向上に貢献します。
NSWは35年以上の物流システム開発の実績をもとに、製造業のお客様のDX推進を支援します。在庫管理の見直しをご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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