大規模倉庫向けWMS(倉庫管理システム)の機能を紹介

大規模倉庫向けのWMS(倉庫管理システム)の機能紹介

WMS(倉庫管理システム)は従来倉庫業、製造業などで使用されてきたシステムですが、消費者の購買がリアルからネットへシフトし倉庫が大規模化する中で、高度なWMSを導入する動きが加速しています。

倉庫の大規模化によって、取り扱う品種や荷主、拠点が増えており、管理が複雑になっています。また各種マテハン機器との連携のほか、TMS(輸配送管理システム)や輸出入業務向けのソフトウェアと連携するニーズも高まっています。作業者も増えるため、担当者の経験に依存せず、よりシンプルに作業できる仕組みも求められるようになりました。

こうしたニーズに応えるには、高度なWMSが不可欠です。そこで本記事では大規模倉庫向けの機能としてどのようなものが求められているのかをご紹介します。

WMS(倉庫管理システム)とは?

2023年8月に経済産業省が発表した「電子商取引に関する市場調査」によると、2022年の日本国内の消費者向けEC市場規模は、22.7兆円になりました。2013年は11.1兆円であることから、この10年で2倍以上拡大したことになります。

EC市場が拡大する中で物流を強化するべく、日本国内には大規模倉庫の建設が相次ぎました。個人消費が横ばいにもかかわらず、EC市場が拡大している以上、今後も倉庫の大規模化は続くことでしょう。

倉庫の大規模化は、新たな課題を浮き彫りにしています。ひとつは人手不足がより深刻になることです。倉庫を建設できるエリアは限られており、同じエリアの倉庫で人材確保の競争が激化することが予想されます。

もうひとつの課題は、倉庫が広くなることで作業が非効率になることです。スペースの増加によって動線が長くなり作業担当者の移動の時間が増えると作業量は減少してしまいます。

従来のWMSでは、出荷指示、入出庫に伴う在庫移動、ロケーション管理など、倉庫業務を効率化する仕組みが備えられていますが、大規模倉庫では人手不足や作業の非効率性を解消できるような自動化や動線の改善ができる仕組みが求められています。

そこで、次章から大規模倉庫に求められる機能を紹介しましょう。

WMS 機能①
入荷から出荷までの倉庫業務をトータルで管理する機能

WMSの基本機能は入荷から出荷までの倉庫業務をカバーしていますが、大規模倉庫向けとしては、自動化を実現する設備との連携や他拠点との在庫とシームレスに管理する機能が求められます。

01各種マテハン機器との連携機能

倉庫での自動化の取り組みのひとつにマテハン機器との連携があります。連携先として、自動倉庫やDPS(デジタルピッキングシステム)があります。

自動倉庫とは、クレーンやシャトル台車、コンベアといった設備が、入庫からピッキング、搬送、梱包まで、一連の作業を自動で行う仕組みです。作業が自動化されているため、人の動線や棚の視認性を考慮することなく保管でき、省スペースも実現できます。

DPSは、ピッキングするべき商品の場所と個数を作業担当者に知らせる仕組みです。商品が保管されている棚の間口にディスプレイが設置されており、必要な商品とその数量が表示されます。作業効率が向上し、ピッキングミスを防ぐことができます。

WMSでこうしたマテハン機器と連携することで、入荷処理や出荷指示、ロケーション移動といった倉庫での作業が一元管理できます。

02他拠点への横持ち対応

横持ちとは、同一社内の拠点間で商品を移動する場合の輸送を指します。全国で営業を展開している企業では複数の倉庫を持っているケースが多くなっています。倉庫間の移動は利益が発生しないため、できる限りコストを抑えて効率化する必要があります。

そこで複数拠点の在庫を一括で閲覧し、倉庫をまたいだ入出庫処理が行える機能が求められます。

03生産工程別の在庫管理

製造業の場合は、完成品だけでなく、原料、半製品といった生産工程別の在庫管理が必要です。完成品を製造するのに、原料、半製品がどれだけ必要となるのかを把握するには、倉庫にすでにある在庫をもとに算出することになります。
倉庫の在庫と生産計画を連動させることで、自社が関係するサプライチェーンの管理が実現します。

WMS 機能②
ERP、TMSをはじめとする他システムとの連携・統合

倉庫全体を管理するのがWMSですが、入荷・出荷処理は仕入・販売と連動しています。また作業中はマテハン機器と人手作業との統合的な管理が求められ、出荷後は輸配送の管理も必要です。より効率化、時短化を図るためにWMSにはこうした他のシステムとの連携や他のシステムの機能の実装が求められます。

01ピッキング用デバイスとの連携

WMSからの出荷指示データをハンディターミナル、音声認識システム、ウェアラブル端末に連携することで、ピッキングリストを印刷しなくても作業することができ、ピッキングミスや漏れを防ぎます。

02WES、WCSの機能実装

大規模倉庫では広いスペースで運搬するため、マテハン、AGV(無人搬送車)、AMR(自律走行搬送ロボット)といった移動に必要な機器が導入されます。
こうした機器を倉庫に合わせて効率的に動作させるため、人と機器と商品が効率的に動かすためのWES(倉庫運用管理システム)、マテハン機器やロボットを遠隔から制御するWCS(倉庫制御システム)の機能をWMSに実装することが求められます。

03TMSとの連携

TMSとは、倉庫から出荷された後に納品先までの輸配送をトータルに管理するツールです。輸配送に使用されるトラックの移動や配車を管理します。WMSと連携することで、適切な配車が可能です。

04輸出入業務向けソフトウェアとの連携

輸出入業務は、NVOCC(非船舶運航業者)や港湾倉庫とのやり取りなどが発生し、WMSの出荷データと関連します。こうした輸出入業務向けソフトウェアとの連携が求められます。

WMS 機能③
入出荷倉庫業務の効率化のための分析機能

大きな倉庫の場合、業務改善のポイントとなるのがピッキング作業です。動線が長く移動に時間を取られたり、商品を探すのに時間がかかったりという問題があり、ミスが生まれやすい作業でもあります。WMSではこうした大規模倉庫ならではの問題を解消するための機能が求められます。

01最適なロケーション配置とピッキングルートの自動設定

ピッキング作業で歩いている時間は作業の5割を占めると言われています。作業を効率化するためには、歩く距離の短い巡回ルートの設定が必要です。

また、ECの市場が拡大する中で多品種少量の販売形態が増えており、倉庫レイアウトの変更頻度も高まっています。その中でも効率的なピッキングができるような最適なロケーション配置が必要です。WMSでは出荷頻度や作業担当者の移動パスを数値化し、ロケーションの最適な配置をガイダンスする機能が求められます。

02長期滞留在庫の把握

今後売れる見込みがなく、長期間在庫が動いていない在庫が把握されないまま、スペースを占領しているケースが見受けられます。WMSでこうした在庫を把握できれば、スペースの効率性が上がります。

03入出庫タイミング分析

たとえば、保管サービスの場合、出庫するものと入庫するもののタイミングが合えば、保管料の収益率が向上します。タイミングの分析機能がWMSにあると望ましいでしょう。

WMS 機能④
倉庫作業員の労務管理機能

人手不足や作業の非効率性の問題を解消するには、倉庫作業担当者のモチベーションを維持し、働きやすい環境を整備しなければなりません。そのためにも、倉庫内の作業担当者の作業状況を把握する必要があります。とくに大規模倉庫では担当者の人数も多く、優先順位が常に変動します。担当者のパフォーマンスを引き出し、ムダな作業を抑えるためには、環境を定量的に分析する機能が必要です。

01倉庫内作業データの取り込み

倉庫内の作業状況を把握するには、作業担当者の作業データを取り込み一元管理することが求められます。

02労働生産性の把握

あらかじめ設定した労働基準に対して作業担当者のパフォーマンスを常時モニタリングすることで、ボトルネックを特定することが求められます。その他にも日時や作業品別比較で多角的な分析ができるのが望ましいでしょう。

03生産性向上へのアプローチ機能

日々の業務を改善し生産性を高めるには、作業の予実について常に確認できる環境が必要です。「遅延入荷」「オンタイム出荷」「ユーザーグループ別生産性」といったKPIを設定し、達成状況をダッシュボードで確認することで、PDCAを迅速に回すことができます。

WMS 機能⑤
倉庫内を3Dで可視化する機能

素早い判断をするためには、定量的なデータはもちろん倉庫内の状況を一目で把握できるようなビジュアルな表現が求められます。

01最適なロケーション配置をWMSで指示

ピッキングで倉庫の間を行ったり来たりする動線は作業の効率性を低下させます。作業担当者が前進しながらピッキング作業ができるロケーションの配置が望ましいでしょう。そこであらかじめスロッティング設定(倉庫内保管位置設定)をしておくことで、最適なロケーションを作業者に依存せず、WMSが自動的に判断して指示する機能が求められます。

02倉庫内の視覚的な認識

どの場所にどの商品があるのか、大規模な倉庫になればなるほど担当者の経験に依存してしまいます。商品がどの場所にあるのか、空いている棚はどこになるのかといったロケーションや作業のボトルネックを視覚化することで、迅速な改善が期待できます。

WMS 機能⑥
国内外の倉庫をグローバルに管理する機能

グローバルに倉庫を展開する場合、地域で導入実績の多いWMSを個別に導入するケースが多くありました。倉庫ごとにシステムが異なると、倉庫間でのデータ共有ができなくなり、グローバルでのサプライチェーンの展開を阻害します。WMSでは各国の在庫を正確に把握し、倉庫間でのコミュニケーションを円滑にする機能が求められています。

01Webを介した顧客主導の入出庫指示、在庫閲覧

顧客がWebのサービスを介して入出庫指示や在庫閲覧ができ、顧客の指示を受けて倉庫側が承認・作業する環境がWMSにあれば、顧客とのやり取りを簡素化できるとともに、顧客にとって場所を選ばず指示できる利便性の高いサービスを提供できます。

02ワールドワイドな拠点間における総合的な倉庫状況把握

グローバルで各倉庫の状況を把握するために、各倉庫において受発注残を反映した実質在庫や入出庫予定を一元化して閲覧する機能が求められます。

03WMS内でのコミュニケーション機能、拠点間情報の共有機能

各倉庫のWMSデータを連携しようとすると、状況把握にタイムラグが発生します。また言語が異なると情報の把握も難しくなります。そのためWMSには多言語対応や各倉庫の状況を同じ画面で閲覧できる機能が必要です。

グローバル企業・大規模倉庫の管理業務をデジタル化するために

このように大規模倉庫にはより自動化・省力化を実現する機能と、地域をまたがった管理ができる機能が求められています。こうしたニーズに応えるのがクラウド倉庫管理システム「Infor WMS」です。

クラウド管理倉庫システム「Infor WMS」は全世界60か国以上で採用されています。3PLビジネスの黎明期から、汎用WMSとして、倉庫、物流センター管理のために必要なさまざまな機能を提供してきました。

クラウド倉庫管理システム「Infor WMS」では、ここまで紹介した大規模倉庫で求められる機能をカバーしています。倉庫管理だけでなく3PL向けの請求処理や労務管理の機能も備えるほか、豊富なAPIにより、これまで多数のマテハン機器と効果的な接続を実現してきました。

多言語対応、タイムゾーン管理、複数拠点管理によるグローバル在庫、輸配送荷物のグローバルトラッキングといったグローバル・ロジスティクスに強みを持っており、世界に物流拠点を持つ多くの企業から信頼されています。

また3Dビジュアルウェアハウスにより、庫内のロケーション、在庫、オーダーの動き、作業員の移動パスといった倉庫内の状況が直感的に把握できるようになっています。

イノベーション投資によって継続した機能強化を提供しているのも魅力のひとつです。今後のInfor WMSの進化にぜひご期待ください 。

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