業務にフィットする商材特化型WMS選定の重要性

WMS(倉庫管理システム)とは

WMS(倉庫管理システム)を導入している企業においても、特定の商材や業態特有の倉庫業務を手作業で補っているケースは珍しくありません。これは、業種や商材で業務プロセスが異なるため、汎用型のWMSだけでは、すべてのニーズをカバーできないことが原因です。最近では、特定の業種や商材に特化したWMSが数多く登場しており、これらを上手に活用することで作業精度の向上や生産性アップ、さらにはビジネス価値の向上が期待できます。
本記事では商材・業態に特化したWMSの種類と利点について紹介します。自社の倉庫業務に最適なWMSを選定する際の参考にしてください。

商材・業態に特化したWMSの必要性

物流は人々の生活や経済成長を支える重要な社会インフラのひとつです。倉庫もその中核を担っています。しかし、取り扱う商材や業態により倉庫業務のプロセスや管理方法は大きく異なるため、一般的な汎用型WMSでは対応が難しいことが多いのです。

たとえば、温度管理が必要な生鮮食品や、厳密なトレーサビリティが求められる医薬品など、特定の商材にはその特性に合わせた管理が必要です。法規制に対応する必要がある業界も存在します。

こうした背景から、近年は商材や業務プロセスに特化したWMSが登場しており、これらのシステムは単に業務効率を上げるだけでなく、商材や業態の特性に合わせた正確な管理を可能にします。これにより、ムダの削減や作業精度の向上が期待でき、結果として企業全体の競争力強化につながります。

次章では具体的な「商材特化型」、「業務特化型」、「法令対応型」のWMSの特長と利点について詳しく説明します。

例1: 商材特化型WMS

商材によって在庫として扱う単位が異なる場合や、販売チャネルによってピッキングや配送の方法が異なる場合があります。商材の特性に対応するWMSには次のようなものがあります。

食品

食品は、賞味期限の管理や、ビールのように1本単位の「ピース」、6缶パックの「ボール」、6缶パックが4つ入った「ケース」といったような入数別管理が必要といった特徴があります。

食品に特化したWMSでは、賞味期限が使用期限を過ぎている場合に出荷指示で引き当てから除外する機能や、入数別に保管、検品、ピッキングができる機能を提供しています。

文書保管

他社の物品を保管する目的を持つ営業倉庫が提供するサービスのひとつに、文書保管サービスがあります。文書保管サービスは、見積書、契約書、納品書といった社内に保管が必要な書類を、防災・セキュリティ設備の整った外部倉庫に保管するというものです。

文書保管に特化したWMSでは、保管ケースの中にある保存文書、フィルム、磁気テープといった内容情報を管理できるのが特徴です。また荷主が預け入れ、取り寄せ、解約、廃棄、閲覧といった依頼や保管状況の確認をWeb上で行う機能があります。さらに営業倉庫と共通の機能として、保管料・荷役料、作業料、運賃などを計算し、請求書を出力できる機能もあります。

例2: 業務特化型WMS

業務の内容に応じて、専門性の高い倉庫管理が必要な場合があります。業務の特性に特化したWMSには次のようなものがあります。

冷凍・冷蔵倉庫

消費者に新鮮で安全な食品を届けるための方策として、コールドチェーンの注目が高まっています。コールドチェーンとは、生産から消費されるまで一貫して低温かつ最適な温度管理を保つ物流の仕組みのことです。コールドチェーンによって廃棄ロスを削減し遠隔地の生鮮食品を新鮮なまま消費者に届けることが可能になります。

物流倉庫で食品を取り扱う場合には、温度管理ができる倉庫が必要となります。こうした冷凍・冷蔵倉庫においては荷主や保管倉庫が変更した場合の名義変更といった処理が必要とされています。輸出入の際に通関手続きが完了するまでの間、商品を保管する保税倉庫の機能を提供している倉庫もあります。

食品には肉や魚のように重さが一定していない不定貫の商品があります。また、食品という特性上、賞味期限が逆転した入出庫の防止が求められるほか、冷凍・冷蔵・常温といった複数の温度帯に対応している場合、商品に適した温度帯の場所に入庫する必要があります。

冷凍・冷蔵倉庫に特化したWMSでは、個数・重量単位の不定貫管理が可能となっており、名義変更に対応し、賞味期限が逆転して入出庫した場合や不適切な温度帯の場所に入庫した場合にチェックする機能を備えています。

製造現場

製造業では部品(原料)を仕入れて製品を作り、出荷します。そのため倉庫の在庫と生産計画が密接に関連します。適切な生産計画を立てるには、部品(原料)、中間品、完成品といったように工程別の在庫を管理しなければなりません。また、出庫した部品がどの製品に使用されたのか、追跡できる仕組みが求められています。個数、重量、容積、寸法といったさまざまな数量管理形態があるのも大きな特徴です。

製造現場の利用に特化したWMSは、さまざまな数量管理形態に対応し、工程別の在庫状況を可視化します。また、工程間でのトレーサビリティが確保されています。さらに部品(原料)の入荷時に品目とパレットを紐づけることで、パレット番号での在庫管理ができるだけでなく、再積み付け、積み付け直し、積み崩しもできるようになります。

EC/通販サイト

EC/通販サイトを中心に事業を展開している場合、自社のECサイトだけでなく、複数のモールに出店しているケースが多くあります。複数のサイトから受注情報を迅速に連携し、出荷までのリードタイムを短縮することは、EC事業としての価値と言えます。

EC物流で扱う代表的な商材として、アパレルがあります。特にアパレル商材はECでは現品の確認や試着ができないため、商品が届いた後に、購入者が期待していた場合の返品・交換のリスクが高いという特徴があります。したがって、WMSには単純な在庫管理機能以外にも、これらのリスクに対応できる機能が求められます。
EC/通販サイトに特化しているWMSでは、返品・交換機能やEC系システムとの連携機能を備えています。外部システムのさまざまなレイアウトに柔軟に対応できるように、データ連携項目のマッピング機能を備えているWMSもあります。

例3: 法令対応型WMS

倉庫業務においては、法令で定められた処理が必要となるケースもあります。法制度が複雑化している中で、業務にスピードと正確性が求められています。

通関業務

商品の輸出入を行う際にネックとなるのが、煩雑な通関手続きです。輸出入する商品は、一般的には保税倉庫を通過します。通関を完了するまでに時間がかかるため、完了するまでの一時保管場所として保税倉庫が存在します。保税倉庫では輸出(輸入)許可が完了するまで貨物の搬出入はできないため、とくに未通関貨物の誤出荷防止については細心の注意を払い、厳格な管理を行わなければなりません。また、海上輸送の場合においては、船積に関する情報や輸出入申告に必要な各種書類との紐づけが必要となり、国内貨物と比べるとより複雑な管理が求められます。

保税管理を伴う倉庫業務プロセスに対応するために、WMSの中には通関業務に関連する機能を備えているものもあります。たとえば、貨物を輸出する際には、船積み準備として通関業者に通関と船積みの作業を委託する「船積指示書(S/I)」、品物の品名、数量、価格などを記載した「インボイス(I/C)」、輸出貨物の個数、包装後の重量・容積などを記載した「パッキングリスト(P/L)」が必要になります。この3点の書類を出庫実績データと連動して出力することが可能です。

薬機法対応

医薬品や医療機器、化粧品を倉庫業務で扱う場合は、「医療機器などの品質、有効性および安全性の確保などに関する法律(薬機法)」に従う必要があります。

倉庫における薬機法に定められた取り扱いの主なポイントは「トレーサビリティの確保」です。どの製品が、いつ・どこに納入されたのかを追跡できるような仕組みが必要になります。
そのため薬機法に対応したWMSでは、ロット単位の先入先出や使用期限管理ができる機能、ロット単位で出荷日・納品先を把握できる機能を提供しています。

自社業務に最適なWMSを導入するポイント

WMSを選定する際には、自社の業務プロセスや取り扱う商材の特性を考慮することが不可欠です。汎用型のWMSでは補えない業務を、特化型のWMSでカバーすることで、業務効率や精度が向上し、ビジネス全体の競争力を強化できます。

NSWでは、35年以上にわたる物流システム開発経験をもとに、入出庫在庫管理システム「ORBIS-Ⅵ 倉庫管理」を提供しています。入出庫在庫管理システム「ORBIS-Ⅵ 倉庫管理」は全業種に対応した汎用型WMSですが、そのほかにも商材や業務に対応したWMSを提供しています。

ORBIS-Ⅵ文書保管

トランクルーム・営業倉庫向けに文書箱・媒体保管業務をシステム化したものです。保存文書、フィルム、磁気テープといった保管ケースで管理する貨物について、ケース内の内容物タイトルを管理できます。ハンディターミナルと連携して入出庫業務を行えるため、誤出荷や作業ミスを軽減でき、業務を効率化できます。

また、荷主はインターネット上で入出庫予約ができるため、荷主に利便性を提供できるだけでなく倉庫での入力業務も減らすことができます。さらに保存文書、フィルム、カルテといった内容物の種別によって入出庫料単価、廃棄料単価、運送料単価が設定できます。

ORBIS-Ⅵ冷蔵倉庫

冷蔵・冷凍倉庫向けのWMSです。不定貫管理や名義変更といった冷蔵・冷凍業務に特有の機能を標準で提供しており、輸出入貨物で必要となる保税・通関業務にも対応しています。1~3期制や日割り計算をはじめ、さまざまな料金計算に対応しているほか、入荷物を納入先別に仕分けして出荷するTC型の機能も備えています。

賞味期限逆転チェックや、賞味期限が近い在庫の出庫をできないようにする機能など、さまざまな誤作業防止機能により作業品質の向上にも貢献します。

ORBIS-Ⅵ製造工場

倉庫業で培ったきめ細かな在庫管理のノウハウを反映した製造工場向けのシステムです。製造業においては、工程別の在庫について厳密に管理していない企業も少なくありません。しかし全工程を通して在庫が適正化されていないために原料不足や在庫切れ、余剰在庫などさまざまな問題が発生しており、多くの企業の悩みの種となっています。

ORBIS-Ⅵ製造工場では、製造プロセスの工程別に在庫管理ができるというのが大きな特徴です。品目、ロット別に在庫の工程履歴が確認でき、トレーサビリティを確保します。

また、他社製の生産管理システムとシームレスな連携が可能です。受注情報をもとに製品出荷を行う、購買入力の情報をもとに入荷処理を行う、生産指示情報をもとに部品の払い出しを行うといった制御が可能です。


同じ商材を扱っていても、業務内容や周辺システム、倉庫の状況、そして顧客ニーズはそれぞれ異なります。そのため、WMSを導入する際には、自社固有の課題に適合するかどうかを慎重に見極める必要があります。業務効率の向上やコスト削減、競争力の強化を実現するには、WMSが現在の業務フローに適合し、期待する成果をもたらすかを総合的に判断することが重要です。

NSWは、400社以上の物流システム導入を支援してきた豊富な実績を誇ります。私たちはこの経験を基に、お客様の課題解決と倉庫業務の最適化を実現するための最適なソリューションを提供いたします。WMSの選定に関して、ぜひお気軽にご相談ください。

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